スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

書物の扱いにご注意

ーカラン

「いらっしゃ……何だ霊夢か……」

「入ってきた客に対してその反応は酷いわよ。」

「客だったらこんな反応はしない!」

「まあ、たしかに何も買わないけど。でもいつもはそこまでの反応じゃないじゃない。」

「今日はすでに二人も来ているから今度も客だと思ったんだよ。」

「二人も?……これは異変かしら。」

「さすがにそれは酷いんじゃないか?……まあたしかに見栄を張ったさ。実際は一人とその従者だよ。」

「ああ、じゃあ異変じゃなくて宴会ね。」

「客だよ。で、今日は何の用だい?」

「暇つぶし。」

「……さ、仕事仕事。」

「やる事ないでしょうが。」

「うるさい。って、いつの間にお茶を用意している?」

「最初からよ。はい、お茶。」

「ありがとう……って、また高価なものを。あと、そこで飲むな。本の上に座るな。」

「いつも私が座る場所に本を置く霖之助さんが悪いのよ。」

「そもそも客ではない奴に席を与えるわけがないだろう。ほら、どけ。本を片付ける。」

「別に私の本なんだからどうしたって良いじゃない。」

「……いろいろと言いたいところはあるが、まず何が『私の』本だ。それはどう見たって僕のだろう。君がこんな本読むわけがない。」

「私のよ。私が霖之助さんに貸した本だもの。」

「……ああ、そういえばこれは変な妖怪が持っていた本か。確かにこの本は君から手に入れたものだが、きちんとした交渉の上で僕のものにしただろう。」

「でしょう。つまり私が貸しているのよ。」

「何を言っているんだ。これは僕のものだ……」





---カラン、カラッ





「駄目だぜ香霖、霊夢は話を聞かないぞ。」

「……判っているさ、あとそれは君も同じだ。」

「霊夢、神社で宴会だって妖怪が騒いでるぞ。」

「やっぱり……。」

「霊夢、こちらの話を聞け。あとで魔理沙にも話がある。」

「じゃ、夜までここで暇をつぶしているぞ。」

「そういうことで。」

「お前等話を聞け!」





「で、何だ話って?」

「君は……はぁ、まあいいや。取りあえず伝えるよう言われたことを言っておく。」

「?」

「図書館から、本を返せと。……お前、また盗んだか。」

「いつか返すと伝えておけ。」

「自分で言え。全然懲りてないなお前。」

「うん。」

「可愛く言っても無駄だ。お前等少しは……いや普通の人ぐらいには本を大事にしろ。」

「自分の本は大切にするさ。」「自分の本なら大切にするわよ。」

「嘘だ……特に霊夢。お前は先ほどまで自分がしてきた事を思い出せ。」

「お茶を飲んでいたわ。」

「違う、そこではない……まあいい。僕の言いたい事は書物を軽く見すぎない事だ。」

「?どういうことだ?」

「深く考えないで聞くな。まずは自分で考えろ。」

「毎度の事だがお前の言い方が悪い。そんなんじゃきちんと相手に伝わらないぜ。」

「確かにその通りかもしれないが、お前に説教される筋合いはない。……つまりそんなに乱雑に扱うと、書物は化けるという事だ。」

「化ける?つまり妖怪になるってこと?」

「正確に言うと付喪神の方が近いが、どちらも似たようなものだし間違ってはいないな。」

「だったら倒せば良いだけでしょう?」

「お前は曲がりなりにも巫女だろう!まさか本気でいったわけではないな?」

「曲がりなりにもって何よ。」

「不完全という意味だ。で、どうなんだ?」

「……。」

「お前……。」

「そんなことは良いからさっさと話を進めようぜ。」

「いや、これは結構重大な問題だ。博麗神社の文献をこいつは失わせるどころか、妖怪にさせるかもしれないのだぞ。」

「あまりそんな面白くなさそうなものには触れていないわ。きちんとしまってあるわよ。」

「良かった……、絶対に粗末に扱うなよ。」

「その話は気になるぜ。」

「博麗神社のことだから、僕も良くは知らないけどね。……おい、間違っても盗もうとか考えるなよ。」

「多分大丈夫よ。博麗神社は色々な結界で守られているから。」

「その割には普通にご神体とこんにちはできたけどな。」

「……その話は少し気になるが、とにかくそれ以外の本も大事に扱え。お前らの扱いが酷すぎる。」

「失礼な、どこを見てそんなことを。」

「お前はもうしゃべるな。」

「……。」

「何の話だっけ。」

「----っ!」

「まあまあ、お茶でものんで落ち着いて。」





「……そう、書物の話だ。書物は歴史書も小説も随筆も、どんな種類の本も様々な念を込められて作られる。特に魔導書なんかそれがないと意味がない。そこらは魔理沙の専門だろ。」

「……。」

「……まあいい。霊夢もだ。推測でものをいうが、お前もいつかは博麗神社に文献を残すんじゃないのか?」

「面倒よねえ。」

「ともかく強い意味があり、強い念が込められた書物は化けたら恐ろしいものになりやすい。」

「倒せば良いじゃない。現にあの後ろから弾幕を出す奴も倒したし。」

「あれは本を持っていただけだろう。風貌から鳥類の妖怪だと思うのだが。まあそれはどうでもいい。倒せば良いと言ったが、単純に倒せばいいものなら良いが、それだけではない呪いを残す妖怪や、そもそもの力が強大すぎて倒せないかもしれないだろう。」

「ああ、あったわね。紙舞だったかしら。周りのものを乗っ取っていく奴。」

「ん?何だいそれは。」

「文の新聞が化ける妖怪だって。何でも読まないと化けるらしいわ。」

「いや、紙舞はただ紙を舞い上がらせて人を驚かす妖怪だったような……。」

「でも、文がそう言ってたし、実際見たのよ。一斉に舞う新聞紙を。」

「お前は騙されやすい所があるしね。特に天狗の言う事だし、信じにくいな。でもその妖怪は僕にとっては恐くないね。」

「何で……って、ああ。」

「きちんと新聞を読んでいるからだ。」

「暇人ねえ……。」

「話を戻そう。そのような力を持つ紙舞がいるかはともかく、その『周りのものを乗っ取ってゆく』のように強大な力を持つものに化けられたら、いかに博麗の巫女と言えど苦労するだろう。」

「私にとっては暇つぶしになるわよ。」

「……お前は幻想郷を守る立場なのに、異変を起こす気か?だから博麗神社は妖怪神社と呼ばれるんだ。」

「……。」

「巫女としての、いや人間という種族の最低限のわきまえぐらいはつけろ。そもそも神を祀るお前が紙を大事にしないんじゃ、お賽銭が来ないのも全て自業自得だ。」

「お賽銭……。」

「……まあいい。自業自得につきあう気はない。で、さっきから魔理沙は黙っているが、話を聞いているのか?」

「……。」

「おい、答えろ。」

「黙ってろって言ったのはお前だろ。」

「……。」

「はい、お茶。」





「……ふぅ、ああいいさ。もう黙っていなくていいよ。」

「じゃあ感想を言うか。」

「あんた何様よ。」

「お前こそなんだ。じゃあ始めるが、お前ただ語りたかっただけだろう。」

「……そう思ったのならそれで良いよ。」

「いつにもまして気力がないわね。」

「お前もその理由の一つだ。」

「あと、妖怪やらなにやらで脅しでもしてる気か?だったら無駄だぞ。逆に楽しんでみたくなる。」

「そうかい。……やっぱり、お前等はもう何を言っても治らないかな。もう本を君たちの手の届かない場所に置くしかないか。」

「何で私も含まれているのよ。」

「もうこの話が始まったことも記憶にないのか?」

「ともかく、そんな脅しじゃ効果ないぞ。まあ本を大事に扱うということぐらいは、心の片隅に入れとくか。」

「言ったな。じゃあこれからはもう泥棒するなよ。」

「もちろん。借りるだけだ。」
スポンサーサイト

泥棒謝罪の同伴






 僕は手に持っている物を見て溜息をついた。
 今持っている物は、購読している『文々。新聞』と呼ばれる新聞だ。知り合いの天狗が作っており、独創性と多少の無理やり感がある記事で面白いと思う。暇つぶしに読むのにちょうどいい物だ。別の言い方をすれば、残念なことは暇つぶし程度にしかつかない。
 別に新聞自体が悪いというわけではない。問題なのは、……そこに書いてある記事にある写真が、僕の知っている人物にそっくりなんだ。

「……それで、また君がやったのか。」
「盗んでいる訳じゃないぜ。ただ少しの間借りていくだけ---」
「それがいけないと言っているんだ……、はぁ、もう半分はあきらめてはいるんだがな。」

 一応新聞記者の射命丸文という人物に確認したが、やはり魔理沙のしわざだった。まあ、魔理沙の写真が大きく出ていたし、魔理沙に化けるような度胸のある妖怪も少ないと思うけど。

「だからといって人の者を勝手に借りていくのを許す訳にはいけない。」
「なんだよ、お前が直接被害にあった訳ではないのに。うるさいな~。」

 …………いつもそうだ。こいつは全く周りの者を気にしていない。みんなすごい迷惑に思っているはずなんだがな。既に僕もよく被害にあっているし、この記事にも被害者が書いてある。しかもこのような泥棒の記事はもう数度目である。
 が、魔理沙のすごいところは、盗んだ相手」と友人になっているんだ。とても迷惑な人物と友人になるなんてみんな人が良すぎるのだろう。
 ……まあ僕もこうして相手してやっているのだけどね。理由が恩師の娘というのもあるだろうが、もしかしたら魔理沙といると退屈がまぎれるから、というのもあるかもしれない。霊夢と同じように、魔理沙にも人を惹き付ける力が備わっていると予想も出来る。
 だが、友人の物を勝手に盗んで良い道理は無い。実際新聞でも迷惑がっている様子が書かれていたし、迷惑がられているのは確かだろう。

「何の理由があっても盗みはいけない。閻魔の裁判で地獄に行く事になるぞ。」
「そんなの閻魔を倒せばいいだけじゃないか。心配は必要ないぜ。」

 ……ミニ八卦炉なんて大層な武器を与えない方がよかったのだろうか。武器を持って、よけいな自信を持ってしまっているのかもしれない。冗談で言ったのだろうが、冗談でもそんなこと言うなんて閻魔の強さを判っていないのだろう。
 尤も自分も直接戦っているところを見たことが無いが、鬼や死神を配下としている存在だ。倒すなど冗談でも普通は言えない。最近は強力な妖怪を倒しまくっているからといって、さすがに調子乗りすぎだろう。本当に閻魔様に痛めつけてもらうべきかな。

「それで、用件はそれだけなのか?ったく、こっちも忙しいのだから。」
「嘘を吐くな。というか、僕も何回君に物を盗まれたのか判らないぐらいに、被害に遭っているんだ。僕の方が許すつもりは無い。」
「それをお前が言うのか?あの時の霊夢への交渉は私も知っているぞ。」
「……交渉と泥棒は違うよ。実際霊夢からは、君と同じくらいの迷惑をかけられているのだから、あの条件で割に合ってない訳が無い。」

 恐らく外の世界の式神についての本のときなどのことを言っているのだろう。あのときは魔理沙の目の前で交渉を行い、魔理沙に思いっきりばれた。まあそのようなことがその前にも無かったという訳ではないが、最近のことならそれを例に挙げられるだろう。

「……まあいいや。で、何をしてほしいんだ?自分に謝れとでも言うのか?」
「いや、今回は僕が被害者じゃない。盗んできた物の持ち主にちゃんと謝るんだ。」

 珍しく魔理沙の方が折れた。暇でやることが無かったからだろうか、何にしてもとても珍しいことだな。今までも何度も言ってきたのだが、まあいいやと言うことも今まではなかった。
 しかしそこで厳しいことを言うと魔理沙はすぐに逃げる。長い付き合いで少しは判る様になった。❾無駄な知識だな。こういうときにしか役に立たない。こういうときが割とたくさんあるのも問題だが。
 
「えー、別に謝らなくても大丈夫だぜ。今回はパチュリーから借りてきたから、けんかとかもしないし。」
「よくない。そのパチュリーという方も新聞で何度も迷惑だという言葉をあげていただろう。」
「今回のあとも普通に図書館に行ったら、パチュリーから何かいろいろ口うるさく言われたけど、最終的には『もういいわ』とパチュリーも言ったぜ。」
「そのもういいわの中に含まれている意味も考えろ、どう考えてもあきらめの意味しか無いだろう。というか謝らずに普通に盗んだ相手のもとに行くという君の神経が理解できん……。」

 本来ならばそんなやつは見つけ次第殺す……今の幻想郷ではそんなことはあってはいけないが、それなりの対策を作って相手を立ち入り禁止にするぐらいは僕はするね。
 というか盗んだ相手に謝るという話に持ち込んだら、とてもいやがり始めたな。おふざけならともかく、本気で謝るのはそんなに嫌か。

「あんなに本があるんだから少しぐらい借りてきてもいいじゃないか。外の世界では図書館は本をみんなに貸し出す場所だと、紫から聞いたことがあるぜ。」
「どこで知ったそんなこと。あと、あれはきちんとしたルールでできていると、本には書いてあった。勝手に本を、何の手続きも無く借りれる場所ではないよ。言い訳なんかしようとしないで、こっちも準備はできているから、さっさとお前の家に本を取りにいって謝りにいくぞ。」
「準備って何もしていないだろ。こっちは忙しいんだからまた今度のときに……って冗談だよ。」
 
 こいつは何度か痛い目に遭わないと判らないたちか。もちろんもう魔理沙は何度も痛い目にあってきた。魔理沙は小さい頃もちょくちょく香霖堂に来て僕の貴重な読書時間を奪っていたのだ。ごちゃごちゃしている店内で暴れるのだから、よくけがをしてしまって霧雨の親」父さんに謝罪をしたものだ。

「もしも逃げたら八卦炉を今後もし壊したり無くしたりしても、僕は何もしてあげないぞ。」
「判った、判ったから。本当に香霖は冗談が通じないな。」

 お前は本当に人を苛立たせるのが上手だな。ちょうど昔の魔理沙がした迷惑を思い出している時を狙うなんて。覚り妖怪にでもなったか?








 一度魔理沙と一緒に魔理沙の家まで行って盗んだ本を取りにいってから、紅魔館に向かう。香霖堂から割と近い場所に魔理沙の家があるので、そんなに時間もかからない。もう紅魔館に向かっている途中だ。
 それにしてもすごい本の量だ。一応半分は魔理沙が魔法で持っているが、持ちきれない分は僕も持つことにした。こんなに盗んでいるということは、おそらく泥棒十回ぐらいじゃすまないだろうな。尤も、僕はもう数えるのをやめるほどにやられたが。もちろん消費物や自分に必要のないもの以外は取り返しているものもある。というかもう必要なものなどは魔理沙の目に付かないところに避難させている。
 僕がいるので魔理沙も陸路でいかせることにした。魔理沙に力を借りて一緒に飛んでいくのも考えたが、飛ぶのに僕は慣れていないし、飛んでいるうちに魔理沙に逃げられる可能性もあるので、念のための考えだ。魔理沙はとてもめんどくさそうにしていたが。そのうちに交通手段はすべて飛ぶことにしてしまい、長時間走ったりできなくなるのではないだろうか。元々動くことの少なくなる魔法使いを目指している魔理沙だが、そもそもあまり動かない魔理沙など想像がつかない。それはそれで面白そうであるが……
 
「なににやついてるんだよ、もう紅魔館が見えてきたぜ。」

 おっと、ついつい考え事をしてしまった。もうそんな場所----
 ……。

「ん?まだ騙されたことに気付かないほどにほうけているのか。」
「……なぁ、お前は今僕が苛立っていることに気付かないほどに惚けているのか?」








 こんなやり取りも途中に挟んで、ようやく紅魔館にたどり着いた。こんなに遠かったっけ。途中のやり取りなどで疲れただけかな。

「おや、また来たのですか……って、もう一人誰かいますね。どなたでしょうか?」

 紅魔館の方を見ると、かなり昔に見た、中華衣装だったかな、ともかくそのような今の時代には見ないような(少なくとも幻想郷では見ない)服装をしている者がいた。

「今度はきちんとした用事で来たぜ。こいつは香霖。咲夜やレミリアは知っている筈だ。香霖堂の店主だよ。」
「ああ、咲夜さんが話していたことがある霖之助という方でしょうか。どうもこんにちは。私は紅美鈴と言います。この紅魔館の門番をしています。」
「僕は霖之助。魔理沙の紹介にもあったように、香霖堂の店主をしているよ。」

 良かったことに礼儀正しい方であった。紅魔館では基本奇天烈な少女しか見ていないからな。しかし門番か吸血鬼の館の門番であるから、強大な力の持ち主なのだろう。重要な立場上に主と会話する機会が多いのだろうか。敬語を使うことにも慣れている。

「今日誰かお客さんが来るとは聞いていませんでしたが……」
「それに関しては急にできた用事であったため、謝罪をしよう。」
「いえ、きちんとした用事であれば急でも結構です。ご用件はなんでしょうか?」
「先日、この魔理沙が迷惑をかけた。それについて魔理沙と一緒に、紅魔館の皆さん、特にパチュリー氏に謝罪をしにきた。」

「…………へ?」

 紅美鈴氏が唖然としていた。目も口も丸くさせて驚いている。……魔理沙が謝るというのに違和感ぐらいは持つかもしれないが、そこまでのことなのだろうか。
 確かに僕も謝られたことなど数えるほど、……数回しかない。謝ることなど決してしない人間と判断されているのか。皆が言うように保護者のような立場になってきているから、そうだと結構つらい。これから紅魔館の被害についての文句が香霖堂にこなければいいのだが。

「えーと、それは本人が謝りにきているということでいいのですよね?」
「ああ、もちろんだが……」
「おいおい、なんだよ信じられないのかよ。香霖も私も言っているじゃないか。」
「あなたは今はじめて言いましたよ……でしたら少しお待ちください。咲夜さんかパチュリーさんに連絡を取ってみるので----」
「その必要はいらないわ、私が許可しましょう。」

 いつのまにか我々のそばにいた咲夜が言った。すぐそばの木陰にレミリアも日傘をさして立っている。その顔は……
 ふむ、これは恐らく

「まあ最初に私たちに謝ってからだけれど。最近の施設破壊の件も合わせて。」「すみませんでした!!」

 急いで謝りそして彼女たちの横を通り抜けていこうとするが、「門番、仕事よ。」逃げ切れるわけが無い。
 ……とりあえずはここに来たのを後悔。もう僕に文句が来てしまった。もう一度言おう、僕は魔理沙の保護者見たく認識されてはいるが、本当に保護者というわけではないのだ。だから僕が被害を受けること自体がおかしいというのに。






 

 魔理沙のしたことを謝り、何度も僕はただ同伴者なだけといったのに無慈悲なレミリアたちから様々な要求をされたあと、今は大図書館に続く廊下を歩いている。魔理沙が道をよく知っているから道案内はいらないので、レミリアたちとはすぐに別れた。

「保護者みたいなことをしようと思ったらこれか……もう金輪際魔理沙のために何かをする気持ちは失せた。」
「そう気を落とすなって。レミリアたちもお前の店の服とか非売品以外をいくつか無料、だったかな。まあその程度で了承してくれたんだから。それだけですんだのを喜ぼうぜ。」
「なんで君が謝ることなのに、僕が主な被害を受けるんだ……。もう今度から盗みをしたら香霖堂一ヶ月立ち入り禁止な。」

 そういっても魔理沙の侵入を防げないのだろうけど。僕は今もレミリアと咲夜が出した、賠償条件の緩和の交渉を考えている。くそ、せめて価値がこれ以下のものというように、具体的なものにできればいいのだが。

「あんなに無駄にある商品の中から少し減るだけだろ。それぐらい気にすんなよ。」
「お前は今回の件で何も学んでいないのか!たくさんあるんだから良いというのはいけない考えと言っただろう。」

 声を荒げて怒鳴った。 あまりに大きな声だったので、近くにいた妖精メイドがびっくりして逃げていく。しまった、つい自分の家と同じように大きな声を出してしまった。一度落ち着こう。
 今の怒鳴りで魔理沙はようやく反省をするそぶりを見せた。
 
「……香霖にも迷惑がかかったのは悪かったよ。あとで私もレミリアたちに賠償のことは言っておく。」
「そう思うのならもう盗みはするな。僕はもうそれしか言えないぞ。」

 金輪際盗みはしないとは言わないんだな。ああ、この謝罪のために出かけるなんて、なんとも無意味な時間なんだと感じてきてしまった。いや、あきらめては駄目だ、教育はあきらめたら終わりなのだ。
 もう少し歩いて、魔理沙が立ち止まった。指差した場所に妖精以外の羽の生えた一人の少女が大きな扉の前に立っていた。

「あ、ようやく来ましたね。話はすでにメイド長から聞いております。」
「すみません、少し話をしていて待たせてしまいましたか。」
「いえいえ、お気になさらず。どうぞ中へ。」








 そこは、見かけよりも広大な図書館であった。ここから見えるこの図書館の端がとても遠くに見える。

「貴方が香霖堂の店主さんね。今回はどうも魔理沙をつれてきてくれてありがとう。私はパチュリー・ノーレッジ。」
「僕は知っている通り、香霖堂店主森近霖之助です。」

 入り口からそれほど遠くはない大きなテーブルの奥に、彼女、パチュリー・ノーレッジ氏が座っていた。僕は魔理沙と一緒にそのテーブルの対面側に移動し、謝罪をする。

「パチュリーさん、泥棒の件はすみませんでした。」
「同じく、こっちも謝るぜ。迷惑をかけた。」

 心がこもっているのかどうかはともかく、きちんと謝ったのは魔理沙としては上出来だろう。先ほどのレミリアと咲夜に対しては結局まともに謝罪の言葉を口にしていなかったような。あのときは急いで僕が大声で謝って、その後は僕とレミリアたちの交渉だった。くそ、嫌なこと思い出してしまった。

「……本当に魔理沙が謝るとはね。言ってしまうと全く期待すら抱けなかったことなのに。……ずっと立っていなくていいわ。そこら辺の椅子に座って。」
「それはどういう意味だよ。」
「そのままの意味よ。貴方は悪いことをしても自分の非を認めないような人でしょう。」

 全くその通り。話し合いの最後の最後までいやがっていたからな。
 魔理沙と一緒にパチュリーと話し合いやすいように、今いる対面側の椅子に座る。

「これが今回借りてきた本だ。ほら、返すぜ。」
「本まで返すとは……。香霖堂さん、どのように魔理沙を説得したのかしら?」
「ただ魔理沙が行くというまで謝りなと言い続けていただけだから、説得とまではいかないよ。」

 本当はくたびれるほどに何回も、何回も言い続けた結果、ようやく動いたのだが。しかしここでは、せっかくの魔理沙のたぶん友人が相手だ。一応魔理沙の印象がさらに悪くならないように言っておく。必要は無いと思うが。

「じゃ、私はどっかで本でも呼んでいるぜ。」

 ……謝ったと思ったらすぐに自分勝手に振る舞いだす。謝ったらすぐに許してくれると思っているのか?
 本来ならもう盗みをした時点で絶交だろうけど。泥棒されたのに、その犯人と友人であり続けられるなんて、よほどの物好きか、とても心の広い人なのかどちらかだ。

「今回の件の賠償など、何かあったら言ってください。」
「あ、もう普通の言葉遣いで話してもらえないかしら。やはり私が普通に話しているのに相手にかしこまられるとこちらが不愉快になるわ。まだ私のような年期の入っていない魔法使いよりかは、貴方の方が年上でしょう?」

 ?僕の年齢も知らないだろうに、なぜそのようなことが言えるのだろうか。まあ多分魔理沙が適当に言いふらしただけだろう。もしくは何かそのようなことが理解できる魔法でもあるのかもしれないし。これぐらいのことは気にすることではないな。

「しかしこちらは謝りにきた方なので……」
「もうその用事は終わったのだから、別に良いでしょ。だから終わるまで言わなかったのよ。貴方はいつもは敬語でずっと話していたりなんかしないのでしょう?」
「たしかに客以外では基本的に敬語は使いませんね。しかし初対面の相手にいきなり普段通りの言葉遣いは少し抵抗を感じますね。」
「一応私はしてほしいと要求しているわ。断るか受け入れるかは自分の判断にして。」
「……判った。これからは普通の言葉遣いにしよう。」
 
 別に僕は敬語でもどちらでもよかったのだが。先ほどパチュリーに言われるまでパチュリーの方が年上だと思っていたのが、本当の今まで敬語を使わなかった理由だったりするし。初対面の年上にだったら言われても普通の言葉遣いをするつもりにはなれない。まあ確かに見た目少女に敬語は合わないな。レミリアなんかは一応年上だけど、見た目も中身も子供だし、彼女の知り合いで彼女に敬語を使うのはメイドぐらいだろう。

「で、それらはたぶんレミィたちがもう請求しているだろうからいいわ。ちゃんと本も返ってきたし。一部だけど。」
「……一部?」

 あの量で一部なのか……?すぐに魔理沙を探してみるが、もう見渡せる範囲にいなかった。この図書館は広すぎるし、本棚に隠されるので侵入者を捜すのは苦労しそうだ。その対策ぐらいは出来ているのだろうが。そういうことに有能である魔法使いのことだし。
 魔理沙の位置を教えてもらってこのあと懲らしめておこうかと思ったが、その前にパチュリーに声をかけられた。

「別に良いわ、もうとっくに諦めているもの。どちらかというと少しでも返ってきたことに驚愕したわ。」
「驚愕とまでいうか……、しかしそれを許したら際限なくやるだろう。それを防ぐためにも、誰かは注意する人が必要だ。」
「もちろん許すつもりは無いわ。注意をする気はもう失せただけ。」

 当たり前だが許してはいないみたいだ。そのうち友人をなくすのではと心配になる。

「それにしても魔理沙のために一緒に謝りにきたりまでするなんて、貴方は魔理沙の教育係?それとも保護者?」
「いや、僕はそのどちらでもないよ。」

 パチュリーは少し意外そうに僕にもう一度尋ねる。魔理沙がもっと子供の頃からよく間違われていたな。

「では何故そこまでするのかしら?」
「えーと、僕は彼女の父親に言葉では言い尽くせないほどの、とても大きな恩義を感じているといったことがある。だから、その恩返しというのが大きいかな。」
「……その恩義というのはどれだけ大事なのかは知らないけど、魔理沙への賠償を請け負うほどのものなのかしら?咲夜が言っていたのだけれど、香霖堂の生計もそんなによくはないのでしょう?」
「それを言われると少し弱いね。」僕はパチュリーの言葉に苦笑する。「しかし、先ほども言った通り恩義もあるし、昔ながらの付き合いはなかなか断ち切れないものだ。それをずるずると今も持ってきているような感じだよ。」

 パチュリーは納得したのだろうか、それ以上言ってこなかった。本に視線を落とす。
 魔理沙は今本を読んでいるみたいなので、一応僕は魔理沙が本に飽きて帰るまで待つことにした。今日また本を盗ませないようにね。
 そうしているとやはり暇なので、紅茶を飲んでいるパチュリーに話しかけてみる。

「少し質問いいかい?」
「私の答えられる範囲なら。」

 答えられない範囲というのは何だ。結構気になるぞ。

「この図書館は実際図書館みたいな事をしているのかい?」
「図書館みたいな事って本の貸し出しとかの事かしら。もちろん基本はしていないわ。勝手にみんなにそう呼ばれているだけだもの。貸してほしいと言われたら貸してあげなくもないけどね。」
「それは良い事を聞いた。一応魔理沙にも伝えとくが……」

 結局借りた本を死ぬまで借りるとか言い出すと思う。

「はぁ……読みたいのならこの図書館で全て読めばいいのに。結局よくここに来るし、ここで本を読む事もあるし。」
「やっぱり君は魔理沙の事を全然嫌っていないようだね。安心したよ。」

 少しパチュリーは黙り込む。どうしたのかと思い声をかけようとするが、先に相手が口を開いた。

「何故かしらね、嫌いにはなれないタイプという感じかしら。自分でもよくわからないのよね。よくわからないけど、友人というのはこういうものなんじゃないかしら。」
「君もやはりよくわからないというのか。僕も先ほど少し考えてみたのだが……」
「へぇ、貴方はどのような考えなのかしら。よかったら教えて。」

 お、話題が出来た。ちょうど良く先程自分も考えていた物であるし、彼女はちゃんと僕の話を聞いてくれそうだ。他の家にくる人は気分次第でしか人の話を聞いてくれないし、すぐに横槍を入れるし……。

「まずは霊夢の性質から話すか。僕の推測であるが-----」










「おい、香霖。話はもうそこら辺にしてくれよ。もう暗くなってきたからそろそろ帰ろうぜ。」

 魔理沙に言われて外を見るとたしかにもうだいぶ暗くなってしまっていた。すっかり話し込んでしまって全く気付かなかった。不機嫌そうにむくれている。
 僕は君を待っている暇つぶしのつもりだったのだが、逆に帰ろうとしている魔理沙を待たせてしまったのかな。

「すまない。君の読書が終わるまでと思っていたから言ってくれれば良かったのに.。」
「あまりにも熱心に話していたから止めづらかったんだよ。」
「……君がそんな気遣いするのか?」

 ついさっき読み終わって帰る気分になっただけか?

「……まあいい。じゃあパチュリー、さようならだ。」
「別にまた来ていいのよ?今日みたいに私の喘息が調子が良かったらまた話せるし。」
「喘息?じゃあ無理をさせてしまったかな。すまない。」
「調子が良い時は大丈夫よ。そこまで悪いという訳ではないからね。」

 魔法使いにそれは致命的では……と思ったが、紅魔館にいる限り場所が味方している。よく魔理沙は子の少女に勝ったな。その為にあの八卦炉が使用されたのだろうな……

「何遠い目をしているんだ?」
「いや、過去の失態を思い出して頭痛がしただけだよ……」
「もう年か。」
「……いや。たしかに君から見たら僕はもう年寄りかもしれないけどね……。」
「それを言ったら私もじゃない。さすがに年寄り扱いは嫌よ。と、それよりも帰るのをちょっと待って。」

 パチュリーは何かをぼそっと呟いた。
 するとすぐに先ほど入り口で会った羽の生えた少女が本を持って現れた。今呟いたのは呪文か。

「これでいいですよね。ではこの本をどうぞ。」
「お、くれるのか?」
「……泥棒を謝罪したすぐ後なのによく言えるわね。これは香霖堂さんに貸すだけよ。」
「僕にかい?別に気をまわさなくていいよ。」
「魔理沙を連れてきてくれたお礼だから、受け取りなさい。これは貴方の仕事にあったものよ。少し見てみなさい。」

 ?言われたまま受け取ってみる。それは……

「!まさか、これは……!」
「貴方が持っているっていう式神の本よ。気に入ったかしら?」

 そう、コンピューターについての本だ。前に集めきったものとは違う種類のものだ。

「これは僕が持っているシリーズと違うみたいだが……どこでこれを?」
「妖精が持っていたものとかよ。この図書館にある外の世界の本の大半はそういって手に入れたわ。」
「これ以外にもあるのか……。本当にいいのか?」
「もちろん貸すだけよ。きちんと返してね。」
「もちろん、魔理沙じゃあるまいし。」
「悪かったな。」

 悪いと思うならやめろ。
 しかしこれは本当にありがたい。僕のコンピューターを使えるようになる道をまた一歩進めたかな。今回はじめて良い事があった。さっきまでは賠償の……いやなことは思い出すべきではないな。

「返すときは魔理沙にでも渡し……、いや、自分で持ってきて。」
「そうだな、それがいい。」
「……もういいわ。帰るぞ。」

 魔理沙がふてくされた。もちろん同情などしないが。最後にもう一度礼を言い、謝罪を魔理沙に言わせて図書館を後にした。



 もちろん家に帰る前にレミリアたちとの交渉が待っている。

「逃げるなよ魔理沙、帰るのはレミリアたちを探して交渉してからだ。ってだから逃げるな!お前からもレミリアたちに言ってくれるといったじゃないか!」

剣の試練

 先ほどそそわに投稿したもの。投稿したのは良いけど、もっと見直しして雰囲気とかを直した方が良かったな。投稿して十分ぐらいで厳しい意見。夜遅くまで起きていて作った結果がこれですか。そそわから消すつもりもここで編集するつもりも無いけど。
 というかそもそもこの作品名前騙しですね。
   ちなみに一つこちらから間違い報告。

『人間が妖怪に襲われそうなんだぞ!』→『半分人間が妖怪に襲われそうなんだぞ!』
 ……見直しはよくしよう。


 ~剣の試練

「貴方、最近非売品の方はどう?」

 ……珍しく気持ちのよい春の朝だ。こういう時は家で一人で本を読んでいるに限る。特に誰もいない中一人で本を読むとなおさらよい。

「話を聞いているかしら。非売品を見せてくれないかと聞いているのよ。」
「突然朝にきたのかと思ったら何だ。客ではないなら帰ってくれ。」

 本当に気持ちのよい気候だったのに、朝起きて店を開けたら後ろから紫がやってきた。彼女は境界を操る能力を持っている妖怪で、恐らく幻想郷中どこにでも一瞬で行けるのだろう。店を開けた瞬間後ろ(店内)から声をかけられた。
 彼女と向き合っていると心を読まれているような気がする。覚りの妖怪とは違った正体不明の恐怖を感じさせる。だから僕が最も苦手とする相手だ。いつもは来る時はストーブの代金でもとりにきたと思ったのだが、そうではないという。

「客ですわ。客は非売品などを見に来て、それを店主と交渉したりする者なのです。」
「こちらは非売品にしている以上、君には見せる気も交渉する機会を与える気もないよ。」
「この私にその態度とは……では質問を変えます。とても強い呪力を持った何かを拾いませんでしたか?」





 …………。ついにきたか。おそらく、いやほぼ間違いなく『あれ』の事を話しにきたのだろう。気を引き締め直し、紫と対話を始めよう。

「?わざわざ君が動くような事とは、ずいぶんと大事なんだね。詳しく聞かせてもらえるかい?」
「結界に影響を与えるような強力な物です。だから大結界の管理者の一人として少し調査に出ています。」

 そのような道具など世界でそんなに無いだろう。

「そんな物を僕が持っていたところで僕が隠し通せるとでも?残念ながらそのような商品は扱ってないよ。」
「……そうですか。まあ良いです、今はこれくらいにしておきましょう。」

 そういうと、紫は空間の裂け目を作り、そこに入ろうとする。

「外の技術を学ぶのは良い事ですが、くれぐれも危険な物を拾ってこないようにしてください。そう忠告しておきましょう。では、また次の代金の徴収のときに。」

 



 おや?拍子抜けだ。こんなにあっさり下がるなんて。間違いなく紫はあの草薙の剣の話をしにきたのだろう。あの剣は本物の神器だ。おそらく彼女もあの剣が欲しいのだろう。なのに、今回はただ本題に触れずに、本当に忠告だけが目的で来たのだろうか。
 一応非売品がおいてある部屋をみてみるが、特に何も動いていないし、草薙の剣もきちんと自分のすぐそばにおいてある。
 取りあえずは今回は紫を退けられたという事で納得しておこう。





 ……しかし、彼女はやはりあきらめるつもりは無いようだ。
 

「ねえ、いつも見せてくれない非売品をそろそろ見せてくれない?」


「売れない物ってどういう物があるの?私に教えてくれないかしら?」


「非売品のある場所に連れて行かしてくれないかしら?」






「霊夢、僕を助けてくれ!そろそろ紫がきてしまうんだ!!」
「……必死に神社に駆け込んでくるやつがいたと思ったら、冷やかしね。」

 霊夢が一瞬出てきたが、Uターンして戻っていった。

「ま、待ってくれ、これは本気で困っているんだ。人間が妖怪に襲われそうなんだぞ!」

 息もぜえぜえになりながら霊夢の肩をつかむ。
 …………僕の顔を見て驚く霊夢。

「真面目な依頼なのね……暇だから一応用件は聞いといてあげるわ。引き受けるかは別だけど。」
「ありがとう、さすが博麗の巫女!!」
「いつもは考えられない気持ちが悪いほどの褒めようね……」
 




「あの紫がそんなにしつこいなんて、霖之助さんが何かしたのか遊ばれているかのどちらかね。」

 やはり勘がいい奴だ。草薙のことは一言も言わずに話したのに、僕が何かしたと言ってくる。まあ、ただ僕が信用が無いだけかもしれないが。

「それで、どうなんだ?」
「そうね、一応は結界でもはっといてあげなくも無いけど……」
「あの妖怪に効くとは思えないな。」

 境界を操る能力、本人自体が結界を使う専門家なのだから、それだけでは難しいだろう。

「彼女も暴れられないように、君がついていて守ってくれるというのは?」
「暴れられるようことでもしたの?ただ、少ししつこく商品の要求をされているようにしか聞こえなかったけど。」

 うっ、

「……はぁ、きちんと話さないと協力しないわよ。」

 もう隠し通す事など出来ないか、いや、まだあきらめるのは早いな。

「……少し珍しいものを見つけたんだ。多分それが狙いなんだと思うね。」
「やっぱい心当たりがあるのね。だったらそれを私が預かっとけばいいんじゃない?」

 具体的に何があるのかを言わなかったが、そこからいきなり食いつきがよくなった。
 ……ツケではなくしっかりとした依頼の報酬でそれを奪うつもりか!顔が少し晴れたぞ!

「いや、違う人が持っているのはやはり不安だね。」

 霊夢は少し考えるようなそぶりをする。

「紫だったら、あなたの物ぐらい奪う気になったらすぐに奪うと思うわよ。」
「ああ、そうだと思うんだが……」
「だったらたぶん紫も遊んでいるだけでしょ。あいつのことはあまり気にしちゃいけないのよ。」
「お、おい!?」

 霊夢は神社の奥に行ってしまった。……飽きたのか。こっちとしてはかなりの大きい問題なんだがな。
 しかし、やはり紫だったら草薙を持っているということを知ったら、もしもそれをほしいのならば、奪うことぐらいたやすいだろう。僕が草薙を持っていることも、あの結界の管理者だったら知っているかもしれない。……本当に考えると考えるほどわからなくなってくる。草薙のことでは無かったらとっくに考えるのをやめている。
 はぁ、とりあえずは今回はいつもどおり適当に扱うくらいの対処しかできないな。






 帰ると、そこには今二番目に会いたくなかった人物いた。

「香霖、お前が外出とは珍しいな。なにかあったのか?」

 魔理沙だ。今草薙の剣が関係している問題と直面しているときに来るなんて、最近運が悪すぎる。本当に紫が関係しているとろくなことが無い。魔理沙が来たという事は紫が直接は関係ないだろうが。

「なんでもないよ。ただ少し神社に行っていただけだ。」
「神社に?霊夢がここに来る事はあっても香霖が逆に行くとは、霖雨でも降るんじゃないのか。」

 確かに僕はほとんど外出をしないが、その言い方は無いだろう。

「まあ君には関係がないよ。客じゃないなら帰りな。」
「今回は客だぜ。ちゃんといろんな物を持ってきたからな。」

 おお!それはよかった。魔理沙はよくいろんな物を拾ってくる。そこで魔理沙が集めたゴミを僕が買い取っているのだ。そこにはたまにとても価値のある物も含まれている事がある。実はこれで僕は草薙の剣を手に入れたのだ。それは秘密だが。
 しかしこれで気分が晴れた。客ならもてなしをしないとな。

「判った。じゃあ、ゆっくりしてくれ。お茶でも入れてこようか?」
「……本当に客か客じゃないかで態度が変わるな。まあ良いんだけど。」





 客ではないのならぞんざいに扱う事はできないが、やはりさっきまで草薙の剣の話をしていたのでとても話ずらい。できるだけ平静を装うようにしないとな。

「さて、では何を持ってきたのかな?何か使えそうな物があれば良いが……」
「今回は使えなさそうな物が少なかったから、あまり持ってきてないぞ。まあ、いくつかレアそうな物は見つけたけど、ここには持ってきてないし。」

 そういう物を見せてくれれば良いのにと思ったが、まあ草薙を不当な条件でような僕を信用できないのだろう(魔理沙は知らない筈だが)。

「たしかに今回は少ないな。両手で持てるぐらいか。」
「大事なのは量より質だろう?」
「いつもは言わないことをなに言っているんだ…。さて、何があるか……」





 …………。
 これは、なんだ?剣のような物だという事は判るが、とても強い霊力によって記憶を探れない。いや、霊力だったら草薙に勝てる物などほとんど存在しないだろう。これは道具が意図的に記憶を探るのを妨げているといった感じか……。

「どうした、香霖?何か値打ちのあるものでもあったか?」
「いや、……少し待ってくれ。えーと、僕の能力でもよくわからない物があるんだ。それをちょっと解析してみないと判らない。」
「ふーん。まあ良いぜ。少し商品でもあさっているよ。」
「盗むなよ。」

 適当な会話はそこで打ち切りにする。少し商品は心配だが、それよりも今はこちらが気になる。
 ふむ、古びた鉄の棒であり鉄の大半は刃状になっている。やはり草薙のような神器なのかもしれないが、記憶が探れないのでどういう物か判らない。こういう時どうすれば良いのだろうか。これは非売品にできるほどの値打ち物だろうし、判らないままにしておくのはまずい。判らないまま非売品にできなくもないが、そもそもまだ今は一応魔理沙の物だ。いや、魔理沙の物だったら言いくるめて手に入れるのは容易い。今はこれの対処法を考えよう。そうだな、詳しそうな人に聞くとか……

「っ、やば!」
「ん?どうした、何か判ったのか?」

 こんな物を見つけたから意識から外れていた。そうだった、紫がもうすぐ代金の徴収に来るんだった。追い返し方を考えてなかった。





 …………あ。そういえば紫はとても強い呪力を持った物を持っているかと聞いていなかったか?草薙は本当に目的ではなく、この物を彼女は手に入れようとしたのでは?

 だとしたら、これは相当に危険な物では?

「おい、どうしたんだ?」

 魔理沙がこちらを覗き込んでくる。答えようと顔を上げ―――





 は?
 魔理沙が後ろへ、いきなり吹っ飛ぶ。
 何が起きた。魔理沙に問いかけようとしたが、声が出ない。いや、そもそも体が勝手に動く――

「突然なにするんだよ!」

 魔理沙が起き上がるが、すぐに僕の手に捕まる。そのまま為すすべも無く壁に叩き付けられる。
くっ、体の主導権がこの物に奪われてとめることができない。
 これが紫が言っていた危険な物か!!

「っ!?」

 僕の手から離れ、とっさに八卦炉を取り出し応戦しようとする。が、

「こんなときに不調子かよ、どうなってるんだ!!」

 ヒヒイロカネのミニ八卦炉が不調子なはずが無いはずだ。これはおそらくこれの魔法だろう。その隙に僕は持っている物を振り下ろす。
 まずい、このままでは魔理沙が!!

「危険な物を拾ってこないようにって忠告したでしょう?」





 今度は僕が吹き飛ばされた。何の予兆も無く突然に。
 何が起きたのかこの『物』は確認しようとする。しかし、もうここは香霖堂ではなかった。僕がよく行く場所、無縁塚だ。そして、やっと僕は安心できた。

「あれだけしつこく言ったのに危険な事に首を突っ込むなんて、本当に愚かですわね。まあ拾ってきたのは魔理沙みたいですし、命ぐらいは勘弁しといてあげましょう。」

 紫が来てくれたのだ。もうすぐ来る事にはなっていたので、もしかしたらと願っていたが、本当にそれがかなってくれるとは。

「これを借りますわよ。」

 彼女が手に持っていたのは、彼女がほしがっているのではと考えていた物、草薙の剣。やはり彼女はこれのことを知っていたのだな。強大な妖怪がこれを持つ事になるとは、元々は考えただけでも恐ろしい事だった。しかし、今は助けてくれるのだから貸すぐらいはしよう。

「……やはりこれは反応してくれませんか。まあこれでもその魔剣ぐらいは追い出せるでしょう。」

 僕の体が彼女に向かって走り出す。しかし、捕らえたと思ったときには目の前から消えている。
 彼女は僕の後ろにまわって草薙の剣を振り下ろす!
 




「お目覚めですか。」

 目覚めて最初に見たのが、この世で最も苦手としている者の顔だった。最悪すぎる。

「……ああ、とてもよく目が覚めてしまったよ。もう二度寝ができないほどにね。」
「って、まだ動いちゃだめだ!」

 耳元で声が聞こえた。そちらを向こうとするが、

「――っ!!!」
「言わんこっちゃない。なにやってんだか。」

 激痛によって顔をしかめる。ああ、いまので記憶が戻ってきた。

「その声は霊夢と魔理沙か。……その様子だと魔理沙は大丈夫なようだな。」
「さすがにこんなので体が壊れるようで異変解決はできないわよ。一応医者には行かせたけど。」
「あの時は本当にびっくりしたぜ。あと、店はかなり壊れてるよ。」

 ああ、僕の香霖堂が……。いや、今回は自分の責任もある。因果応報か。

「それにしても案外早く起きたわね。なんだかんだいって半分妖怪の血が流れているのね。」
「……ありがとう、一応看病してくれて。」
「前に風邪引いた時があったろ、あれのお返しだ。」

 優しいところもできてきたのかな、あの二人にも。そうだったらとても良い傾向だ。そのまま泥棒やツケもやめてほしいのだが。

 ……さてと。

「すまないな。少し霊夢と魔理沙は席を外してくれ。」
「えー、なんでだよ。紫と何を話すんだよ。」
「……魔理沙、判ってるでしょ。これは割と重大な話なのよ。」

 紫があらかじめ二人に伝えといたのだろう。霊夢が魔理沙を連れて行く。魔理沙はまだ何か言いたそうだったが、すぐにしゅんとなって霊夢についていく。






「では、今回の件について話し合いましょうか。」

 …………ああ、あの紫相手に、言った事を守らないで危険な事をしてしまったんだ。

「下手をすれば、今回は結界に問題が出るような大事だったんだろう?……処刑も覚悟の上だ。」
「いえ、今回の件はそこまで広がる可能性があっただけで、実際は特に問題は起きなかった。あれぐらいだったら霊夢でも解決できたでしょう。見つけにくくするような能力を持った物だっただけ。あと、貴方だけではなく今回は拾ってきた魔理沙にも責任があるはずです。」
「その魔理沙の分も僕が処罰を受けよう。最大の責任は僕にあるからね。」
 
 僕はそこで土下座をする。ああ、何十年ぶりだろう、土下座なんて。しかし、こちらの責任である事は揺るがない。真犯人ではない者が処罰を受ける事は絶対に免れなければならない。
 そこで、彼女は少しの間考えるそぶりをする。

「土下座なんかしないで、顔を上げてください。別に私は神でも閻魔でもないから処罰を与える事はしないわ。それを与えるのは本当の幻想郷の管理者の霊夢か、無縁塚によく来る閻魔でしょう。本当に結界を破壊したとかの時は別だけれど。……そうね、助けた報酬として何かをもらっていくのが一番かしら。」
「だったら草薙でも何でも持っていってもいい。すまなかった、君の言う言葉をよく聞いておけば……」
「私は詳しい事を貴方に伝える気はありませんでしたわ。そちらの方が危ない事ですもの。」

 そういってから、僕の隣に置いてある草薙を見た。

「私は草薙の剣などいりませんわ。」
「は?」

 どういうことだ?こんな貴重な強力な神器をいらないというのか、何か裏があるのか。
 いや、まさかこれが偽物だとでも?

「さすがにそんな事は無いわ。きちんとした本物よ。ただ、私には反応が全くしなかったでしょう?」
「反応?」
「叢雲で雲を呼び寄せる事も無かった。それだけで私では上手に扱えないという事が判ったので、上手に扱えない者はただの足かせとなる。別に回収しても良いのですが、無害なところにおいておくのもまた懸命な判断でしょう。」
「僕がもしも悪用するようだったら?」
 
 ……このとき、今まで見た中で、彼女の一番の笑みを見た。

「そんな事出来るとは思えませんわ。……そうね、もしもそんな事があったら遠慮なく消させてもらいますわ。」





 当たり前だが、彼女は本気でそのようなことを言ったのだろう。今でもあの笑みが脳にこびりついている。
 仮説だが、今回のは草薙が意図的に魔剣を呼んだのかもしれない。つまり、草薙の剣に認めてもらうのは、とても大変な試練が待ち受けているという事か。
 いやもしかしたらそれよりも紫が、草薙の剣に認めてもらう事で最大の試練なのかもしれないな。このような事があると、あきらめたくなってくる。僕は天下を手に入れる事が出来るだろうか。

歴史書の正しい書き方

 昨日そそわに投稿した話です。詳しくは多分今日中に書くそそわにきたコメント返しで。


 ~歴史書の正しい書き方

 
  歴史書とは、後世に伝えられるべき現実のことが記されているものだ。歴史を作ること、それが簡単にできる物。

「どうするかな……。」

 今、僕はそれを作っている真っ最中であった。歴史書といっても、日記のようなものしか今まで書いていなかったが。
 歴史を作ることが簡単にできるので、とても危険なものといえる。少し使い方を間違えれば、取り返しのつかない事になりかねない。そう考えてしまったら、続きを書けなくなってしまったのだ。今までしてきたなにげない、日記を書くのと同じようにしか思ってなかったことが、どんなに危ないことだったのか。書く前に歴史書について考察するべきだった。

「しょうがない、里まで出かけてくるか。」




「それで私を頼ってきたと。」

 彼女は稗田阿求。伝統のある家系のひとつで、人里で最も幻想郷の知識を持つ家系である。彼女は転生を続けて『幻想郷縁起』という歴史書を書き続けている。その歴史書は千年近く前から続けている歴史書で、いわば僕の大先輩であり、尊敬する人でもある。

「あなたが人里に来たと思ったら、またそんな用事でしたか。私も暇ではないのですよ。」
「それは理解しているつもりです。しかし、幻想郷縁起への資料提供の貸しがまだ残っているはずなので、それを返してもらおうかと。」

 昔人間の里にすんでいた事もあり、来る途中でも珍しい物を見るような視線を感じた。しかし、阿求は僕が半妖だと知っていても、気にしないで接してくれる数少ない人間だ。だからたまにここにきて、今みたいに相談に乗ってもらったりしている。
 彼女の幻想郷縁起の編集を手伝って資料提供をしているから、彼女に普通に会いに行くことができた。まあそりゃあ、どことも知らない半妖を幻想郷の大事な人に会わせる事ができる訳がない。商売人の利点はこういうところにある。

「そのことだったら幻想郷縁起の『英雄伝』にあなたを書いてあげたじゃないですか。さらにあなたの店の宣伝も。」
「……あれをうれしいと思うとでも?お言葉ですが、あれから悪意が感じられましたよ。」

 その言葉は聞き捨てならなかった。「商売する気が有るのか判らない(無い)」「お世辞にも商売向きな性格ではない」とか書かれて、さすがの僕もイラっときた。

「まあいいんですけどね。早く終わるでしょうし。幺樂団のテープをひとつもらえれば引き受けましょう。」
「……感謝します。」

 何も言わずに引き受けてほしいと思ったが、ここでこっちが文句を言うと本題からどんどん離れていってしまいそうだから言うのはやめた。ちゃっかり割と高価な物を要求されたが、香霖堂の未来のためにはしかたあるまい。

「というかそういうことは書き始める前に考えることですよ。あなたらしくも無い浅はかな行動ですね。」
「それはとうの昔に後悔しているので、そろそろ本題に入りましょう。」

 というか、阿求の方が無理やり本題から遠ざけようとしているような気がする。

「そう急かさないでくださいよ。」
「お願いですから、本題に入ってください……。」

 頼みに来ている以上強くは言わないけれど、もう我慢ができなくなってきた。

「はいはい判りました。じゃあよく聞いておいてくださいよ。二度言うのは面倒ですから。」

 ……ようやくか。今回の阿礼乙女は周りの巫女や妖怪に感化されすぎなのでは、と思う。

「簡単に言いますと、そんなことを考えないのが一番です。」
「…………は?」




「二度は言いませんよ。」
「いや、それはいいのだが……。」
「別に危ないと思ったら、すぐに燃やしたりすればいいだけの話でしょう?こんなつまらないことに悩んではいけませんよ。」

 確かにそのとおりだが、……いや、それは問題点がある。

「取り返しのつかないことをしたときに、大事な物を簡単に捨てることができると思いますか?」
「だから、そこを考えるのを歴史書と呼ばれるものを書く前に考えろといったのですよ。」

 ……なるほど。

「要はその覚悟が無い人は、正しい歴史を記した歴史書を書く資格が無いということですね。」
「そういうこと。」

 今日始めて阿求の先輩らしいところを見れたような気がする。
 だが、それがとても的確で、正しい意見である。僕はだから彼女を尊敬できる。

 用事は済んだ。僕は立って、帰る準備を始める。

「ありがとうございました。後日自分から幺樂団のテープを持ってくるので、待っていてください。」
「もういいのですか?もう夜なので、食事はいかがですか?」

 こういう気が利くところを、霊夢や魔理沙も見習ってほしい。

「いえ、食事はとらなくてもいい体ですし、遠慮しましょう。それよりも早く帰った方がいい。」
「だったら、外ももう暗いので送りの者を出しますよ。」
「ありがとうございます。でも大丈夫です。これでも半妖なので、自分の身くらい守れると思います。」
「……判りました。それではお気をつけて。」


 
 彼女は割りと理想的な人間だと思う。時に過ぎた冗談も言うが、まじめで頭も働く、思いやりがある人だ。彼女を尊敬する人は少なくないだろう。

「といかんいかん、これ以上のことを考えるのはだめだ。」

 僕は別れから逃げる臆病者だ。だから必要以上に人間とも妖怪とも親しくはならない。その先には深い悲しみが訪れるかもしれないから……。
 しかし、彼女の場合は自分が早く死んで、次転生するときはもう世代が替わっている。嫌でも来るであろうその時の別れの悲しみを、千年以上耐えている者だ。考えれば考えるほど、尊敬に値する部分が思い浮かんでしまう。自分はなんだかんだいっても、彼女を好きになりかけているのかもしれないと考え、苦笑した。

「そうだな……」

 あるひとつの考えが浮かんだ。それを聞いたら自分で考えろと怒られるかなぁとか思いながら。

「どうしたら別れの悲しみに耐えられるようになるか聞いてみようかな。」


 親しい誰かとともに終わりを迎えられること。それが僕の最大の望みだ。 







テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

涼しさを求めて

 東方創想話にのせたやつです。六時間で高評価だったので、とても驚きました。この調子で書いていければ良いと思います。


 ~涼しさを求めて


 夏。人間も妖怪も運動が活発になる季節だと言われていたこともあるが、最近の人間は家の中に居て暑いからと外にでないことが多いらしい。長く生きているものから見ると本当に嘆かわしいことだ。子供はもっと外に出るべきだと言うのに。

 …しかし暑い夏だ。これではこの僕でさえ外に出る気が起きない。最近はさらに暑くなっていってるような気がする。龍神さまの機嫌でもよすぎるのだろうか。これでは何人か死人が出てもおかしくはない。里の人間は大丈夫だろうか。

「霖之助さん、いるわよね。」

 誰かが僕を呼んでいるようだ。しかし暑すぎて確認もしたくはない。そのま
まの状態でうなだれている。

「?寝ているのかしら。」

 そのまま奥へとあがっていく音が聞こえる。

「霖之…って大丈夫?」
「…ああ、霊夢…か。」

 まあ歩いて勝手に奥まで来るような知り合いはほかには、…数名は居るな。

「こうも暑いと、何もする気が起きないな。だから客以外はお断りだ。」
「はぁ、ここでは冬は暖かいのになんで夏は涼しくしないの?」

 いつも通り無視か。何か突っ込む気にもならないが、質問には答えておく。

「しょうがないだろ。そういうものがあまり見つからないし、見つけにいくとしても、この暑さの中無縁塚まで行けというのか?だったら手伝ってもらうぞ。」
「そんなのいやに決まっているわよ…」

こっちだって嫌なんだよ…。そういっても無駄だろうけれど一応つぶやいておく。
 急に立ち上がって、霊夢はなぜかお茶を入れてくる。ポットからコップに移し替えて、その暑いお茶を…

「なんで、こんな暑いときに、熱そうなお茶を飲むんだ!!」

 突っ込まずにはいられなかった。見てるこっちが暑い。これはなにもしてくれない僕への嫌がらせか!?

「ここまで来るまででもう汗かいてのどがからからなのよ。」

 だとしてもほかに飲む物があるだろう!?

「そんなに暑いのだったら、ここに来るのではなく冥界とかに行く方が良いだろう?何故わざわざこの香霖堂なんかに?」

 冥界は幽霊があふれていてとても肌寒い場所だ。現界の季節など関係ないので、いつでも涼しい場所である。とは言っても冥界に行けるようになったのは最近の事で、幽霊亡霊などがたくさん居るので危険な場所である。そんな事霊夢に言う方が愚かな事ではあるが。

「そこまでいくのにとても暑い中を通るじゃないの。」
「それはこの暑い中お茶を飲もうとしたが者が言う言葉か?…はぁ、分かった分かった、暑さを和らげる物を持ってこよう。」

 このまま霊夢が愚痴などを言い続けるのを聞いていたくない。

 そう言うと、霊夢は顔を輝かせてこちらを見た。

「では少し待っていてくれ。」

 そういって僕はその場を去った。




 …さっきは持ってくると言ったが、本当にそのような物を全然入荷できていない。というかそんな物があったらもうとっくに使用している。

「はぁ…、どうしたものかな」

 そして、足下にある物を見る。

「……これを使うしか無いかな。」





「おそかったじゃない。で、何を持ってきたの?」

 もう期待しまくりの顔で見られる。
 これで失敗したら霊夢はさぞかしご立腹になるだろう。しかし、こっちもあれを持ち出しまでしたんだ。そんなことは多分起こらないだろう。

「これだよ。」

 香霖堂特製酒を上に持ち上げる。

「…え」

 霊夢の笑顔が凍り付く。あげていた顔を伏せてしまう。
 確かにこれでただの酒だったら、当たり前のように霊夢は怒るだろう。
 ただ、この酒はただの酒ではない。香霖堂特製酒だ。

「残念がるのはまだ早いよ霊夢。」
「酒ならつい昨日鬼と山ほど飲んだわよ…」
「いやいや、これはただの酒ではないよ。」

 霊夢が顔を上げる。

「じゃあ鬼の酒とどっちが貴重?」
「まずそれを聞くか。…まあ今この時期においてでは、たぶん鬼のひょうたんから出るような酒よりかは貴重と言えると思う。」
「すごい自信ね…。だったら言ってみなさい。」

 やはり偉そうなのが気になるが、もう焦らすのはよくないだろう。

「これはね、なんと冷たいお酒なんだよ!」


 霊夢は息を飲んだ。
 そう、夏のみとても貴重なお酒だ。これを飲むには氷の妖精か河童あたりに頼むしか無いだろう。

「…すごいわね。そんなのどうやって作ったの?」

 霊夢も感動しているようだ。当たり前だ。こっちもこんな貴重な物を出してきたのだから。
 これを作るのは、魔理沙が持つミニ八卦炉と同じ、ある物を溶かして混ぜた物の近くにおいておいたのだ。その物は用途が【物を冷やして保存する】だったのを見てひらめいた。保存しておくための物だけあって、それを部屋においておくと冷えすぎてしまう。道具はそれにあった使い方があるのだ。今回はそれは保存するための物であっただけ。…早く部屋を冷やすための物が欲しい。
 ただしそれを霊夢に教えるわけにはいかない。奪われてしまうだろう。取りあえずは注意を違う物に向けさせよう。

「それは企業秘密だよ。そんな事より飲もうじゃないか。」
「それもそうね!じゃあ飲みましょう。」

 そういってふたを開け……ん?
 なにこれ、……まさかっ!?


「…凍ってしまっている…?」
プロフィール

せる

Author:せる
霖之助好きで、霖之助のssを書いてある場所でいろいろコメしている者です。自分のネタがたまってきたので、そそわに投稿してそれをここにまとめる事にしました。
リンクはフリーです。というかこちらからお願いしたいくらいなので、もしよかったら貼っておいてください。

FC2カウンター
↓なんとなく作っておきます
最新記事
最新コメント
お空襲時計
 xmofuxさんのブログパーツ。感謝!!
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。